マドリードの美術館はその建築を見るだけでも価値があります。今回は中心地に数ある美術館の中から、歴史的建造物と面白く融合したお気に入り2か所をご案内したいと思います。
現代アート美術館として1992年にオープンしたソフィア美術館。この美術館の建物は16世紀、18世紀、20世紀に活躍したそれぞれの偉大なる建築家たちの結集。
オリジナルは16世紀の黄金時代、国王フェリペ2世の命で建てられた「サン カルロス病院」。その後、18世紀国王カルロス3世が大改装を計画します。国王に仕えていたイタリア建築家Francisco Sabatini《フランシスコ・サバティ-二》が指揮を取りました。この建築家、マドリ-ド王宮にも大きく貢献した18世紀の偉大なる建築家です。様々な改築がなされたものの、1977年、歴史芸術保存建造物に指定され建物保存が保証されると美術館へと発展して行きます。
2005年、美術館拡大に向けフランスの建築家Jean Nouvel(ジャン・ヌーベル)がたちあがります。18世紀の元病院とは全く異なる近代的な建物を併設させました。彼はプリツカ-賞受者であり、日本では東京電通本社を手掛けた建築家です。
こんな巨大な屋根は見たことがない!どこから見ても目立つ真っ赤な天蓋。
驚異の8000平方Mの屋根は一見、薄い鉄板を乗せているようですが、この切込みを見ると相当厚みがあるのが分かります。下から見るとまるで空に赤い折り紙を置いたような完璧な直線が特徴的。
一番の注目は、200年の時を隔てたこの隙間。
ジャン・ヌ—ベル氏が18世紀の建築家フランシスコ・サバティ-二に最高の敬意を示したのだと(勝手に)感じるこの隙間。元サンカルロス病院と離れ過ぎずに平行に並べた屋根。この間に200年の隔たりがあることを考えると感動的です。このように先代の残した物に敬意を表して新しい物を加える。これがやはり石建築の醍醐味。
カタル-ニャ大手銀行「La Caixa」財団が2008年にオープンさせたオールジャンルアートの展示、ワークショップ開催などを行うソーシャルカルチャ-センタ-です。
19世紀のレンガ造りの発電所を一部残して改装したのは、プリツカ-賞受賞スイスの建築ユニットHerzog&De Meuron(ヘルツォーク&デムーロン)。日本では、東京青山のプラダブティック、有名な所では北京オリンピックのメインスタジアム驚異の「鳥の巣」を生み出した建築家たちです。
じっくり見ると興味深い。建築ど素人的に表現すると、「古いレンガ造りの発電所を地上階部分は切り取り、最上階部分は全く違った素材で積み増している」。それにより、建物がまるで浮いているように見えます。建物に近づくと、上の右写真のように柱が殆どなく本当に宙に浮いている錯覚に陥ります。また、建物上に積み増した部分はカフェになっており美術館を利用しない人でも上がることが出来ます。
メインエントランスは近未来的なメタリックな階段がレセプションまで続いています。それに比べ中の階段は
全く異なった素材と柔らかいデザインで造られています。
三角形を合わせて作った床、天井、壁。3角形にすることによって凹凸を出し、無機質で平凡になりがちな空間をより立体的にしています。この3角形の頂点がピッタリ合ってるところが最高に心地良いですね。
CaixaforumMadrid横にあるひと際目を惹く緑の壁は「垂直庭園」。
フランスの植物学者Patrick Blanc(パトリック・ブラン)が造った壁です。彼の作品は世界中にあり、日本では金沢21世紀美術館が一番有名なところでしょうか。
彼のコンセプトは「植物=オブジェ」ではなく、「植物=共生するパ-トナ-」。壁に生きた植物を張り付けるのではなく、そこに生態系を創りあげるというもの。その場所にあった植物や生物を研究して創り上げるため壁が成長していきます。さらに同じ壁は2つとないというのも魅力の一つ。驚く事に土は一切使用されておらず特殊な素材に植物を植えています。近づいてよく見ると水が少しずつ流れています。季節によって違った顔を見せてくれるなんて本当に素敵ですね。
パトリックブランの世界観を知る↓ (英字のみです)
The Vertical Garden: From Nature to the City
- 作者:Blanc, Patrick
- 発売日: 2008/08/01
- メディア: ハードカバー
スペインの美術館は、絵を楽しむだけではありません。建物、内装も必見です。
次回はおしゃれな物が溢れている。美術館内ショップを紹介します。
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