PrimaveraNa-気づけば旅が仕事だった。

ツアコンとして世界を飛び回り、現在スペインでガイドをする生活。こんな時代だから本気で旅を見直そう。

スペイン生ハムの選び方

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スペインではクリスマス約1か月前の11月半ばから、至る所で生ハムがずらりと並びます。どれも同じように見えるこの生ハムの足!やはり美味しい物を選びたいですよね。どんな種類があるのかご紹介していきたいと思います。

ハモン・セラ-ノとハモン・イベリコ

スペインでは大きく分けてハモン・セラ-ノハモン・イベリコがありますが違いは簡単。

【ハモン・セラ-ノ】はヨーロッパで一般的に食される白豚使用

-「セラ-ノ」とはスペイン語で「山岳」という意味です。昔は山岳地帯で育てられていましたが、現在は農場管理の元で育ちます。

【ハモン・イベリコ】イベリア半島在来種の黒豚使用。

-他国では取り扱われていない貴重な豚です。「イベリコ」とはスペイン語で「イベリアの」という意味です。

実は、スペインで生産されている生ハムの90%以上は成長が早く取り扱いやすいハモン・セラ-ノ。ということで、ハモン・イベリコは大変貴重ということになります。

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(左)ハモン・イベリコ (右)ハモン・セラ-ノ

 最近日本でもスペインバルで見かけるようになった生ハム。 イベリコかセラ-ノかは「足のひづめ」を見ると一目で分かります。蹄がい場合はセラ-ノ黒い場合はイベリコです。スペインではその蹄が黒いことから、ハモン・イベリコのことを「Pata Negra」パッタ・ネグラと呼んでいます。「パッタ」はスペイン語で「足」、「ネグラ」は「黒」という意味があります。

イベリコの中でも4ランクに区別

 最高級と言われているハモン・イベリコですが、与える餌と環境でさらに4ランクに分けられています。偽造商品があまりにも増えたため、2014年から品質に合わせて誰でも見分けることができる色付けタグが誕生。

①豚の種類-50%以上がイベリコ種であること

100%の純血のイベリコ豚

75%―母豚が純イベリコ種、父豚が50%イベリコ種

50%―母豚が純イベリコ種、父豚が別種(主に赤豚のデュロック種)

 

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②餌と環境が重要

―100%イベリコ種でドングリのみを食べ放し飼い。100%イベリコ種

―50%~75%イベリコ種 ドングリのみを食べ放し飼い。

―50%以上イベリコ種 飼料 放し飼い

白―50%以上イベリコ種 飼料 農場

 黒と赤タグが付けられている豚はドングリの時期である10月からは、ドングリを求めて1日数十キロも歩き廻ります。

③熟成期間

ハモン・セラ-ノの熟成期間は

Bodega-10か月以上

Reserva-12か月以上

Gran Reserva-15か月以上

最高級のハモン・イベリコは最短20か月以上

イベリコ100%の最高級は36か月なんと3年熟成する必要があります。

 最高級のイベリコ豚は一般的に後ろ脚を指し、片足が7kg以上あります。一般のス―パ-で売られている物は白・緑タグが多く、それでも1本100ユ-ロ超え。最高級の黒ラベルは300ユーロなんて当たり前の世界です。またPaleta(パレタ)と言われる前足は5㎏前後、こちらはお値段がぐっと下がるのでねらい目ですね。

アレンジ色々

最高級のハモン・セラ-ノはやはり肉そのものの旨味を味わうのがお勧めですが、 ランクに合わせて色んなアレンジを楽しむことができます。バゲットをこんがり焼いてオリ-ブオイルをたらし、すりつぶしたトマトをたっぷりのせ生ハムを飾ると最高の朝食になります。また、子どもが大好きなフライドポテトも半熟卵と生ハムを乗せるだけでお酒のおつまみに大変身。ぜひお試し下さい。

 

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 クリスマスの雰囲気やバルの様子をライブで楽しむことが出来るオンラインツアー絶賛受付中。生ハムやスパニッシュオムレツも登場します。ワイン片手にご参加下さい。

12月29日(火)日本時間20時~(約1時間)

www.myushop.net

 

 

 

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マドリードクリスマスイルミネーション 2020-2021

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さて今年も始まりました【マドリ-ドのイルミネーション】。暗いニュースが続くスペインですが、クリスマスをできるだけ明るく照らそうと昨年より30箇所多い210箇所の広場や通りでイルミネーションを楽しめるようになっています。スペイン新聞El Paisによると、317万ユ-ロをかけて1080万個のLED電球が使用されたそうです。ちなみに昨年は308万ユ-ロの費用だったので今年はかなり力を入れたようですね。しかし、昨年とは違い観光客のいないマドリ-ド…。経済効果が通年より見込めない年にそんな税金をつぎ込んで!!なんて言っても仕方がありません。点灯したからには楽しみましょう。

マドリードのクリスマス | マドリード観光

クリスマスイルミネーション点灯時間 2020-2021

11月26日~1月6日(コロナの影響で変更になる可能性があります) 

通常は18:00~00:00点灯。以下は時間帯が変わります。

  • 12月24日、1月5日:18:00~03:00
  • 12月31日    :18:00~06:00
今年初☆登場のイルミネーション

マドリ-ドイルミネーションは世界で活躍するドイツ人建築家Ben Bosche(ベン・ボッシュ)を始めとする、デザイナー、ライトスペシャリスト達が手掛けています。それに加え今年はスペイン人デザイナーから成る【Asociación de Creadores de Moda de España(モードクリエイター協会)】(以後ACMEと表記します)が初参加しました。

creadores.org

 マドリードNO.1のクリスマスツリー

 スペイン0km地点があるソル広場で光輝く街最大のクリスマスツリー。14段あり、高さ35M、重さ25トン、9万個ものLED電球が使用されています。

今年は上記にも記載したACMEからデザイナーユニットDevota&Lombaがデザインを担当。彼らのファッションは完璧なカットラインや革新的なパタ-ンを特徴とし、まるで布で建築を創っっているようだと表現されています。そんな彼らが手掛けがツリ-がこちら。

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(左・中央)2020 (右)2019

ライトを点けていない時は中央写真のように折り紙を張り付けたような幾何学模様になっており、近未来的な少し冷たいイメージです。しかし、デザイナー達が心掛けたのは、「クラシカルで暖かみがあり、幼い頃によく目にしたクリスマスの風景」。そのため、昨年まで目にした原色を多く使用する華やかなツリーではなく、「柊の木」を思わせる優しいブルーグリーンカラーになっています。確かに点灯した写真(左)を見ると、どこか懐かしく誰もが思い描くヨーロッパの典型的なツリーのイメージになっていますね。個人的にこのエレガントな感じがとても好きです。

 ベラスケスの絵画から10Mの「ラス・メニ-ナス」

 今年初!コロン広場に登場した10mもある「Gran Menina(グラン・メニ-ナ)」

こちらもやはり、ACMEからAndrés Sardá(アンドレス・サルダ)がデザインを担当しました。デザイナーはランジェリーや水着など女性の体を美しく見せるデザインで有名です。今回手掛けた「Gran Menina(グラン・メニ-ナ)」がこちらです。

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10Mの巨大なメニ-ナ。インスピレーションはデザイナーが得意とするBustier(ビスチェ)。これは肩ひものない下着でコルセットに似た物です。美しく表現するために、3万7千個以上ものLED電球を使用した豪華な作品です。プラスティックダイヤモンドという特殊な素材とスパンコール、シルバーボールを使用し豪華な仕上がりになっています。なんと重さ1.3トン!インタビューの中で「この美しいラスメニ-ナスから希望の光を届けたい」と言っています。その願いが届くと良いですね。 

Meninas Madrid Gallery (メニ-ナス・マドリード・ギャラリー)とは?

 ラスメニ-ナス・マドリード・ギャラリーは2018年に発足した街おこしプロジェクト。17世紀に活躍した宮廷画家ベラスケスの絵画「Las Meninas(女官たち)」をモデルにした最新オブジェに世界中の著名人たちがデザインし街中に設置。

 2021年「Xacobeo シャコベオ年」も登場

 2021年はシャコベオ年です。カルロス5世広場にはガリシア州協力の元で長さ23m、高さ3.3mのシャコベオのイルミネーションが誕生しました。

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静かで見逃しがちですが貴重な年。2021年は明るい希望の光で溢れるような気持ちにさせてくれます。

 

 Xacobeo(シャコベオ年)って何?

伝説によると9世紀レコンキスタ(国土回復運動)中、星に導かれた羊飼いがイエス使徒である大ヤコブの墓をがガリシアで発見しました。その地を「Santiago de Compostela」と呼ぶようになります。Santiagoとはヤコブ、Compostelaはラテン語星の野を意味すると言われています。

ヤコブが殉教した7月25日が日曜日になる年が聖年、つまりシャコベオ年となります。

聖年は6-5-6-11年のサイクルでやってくるため、直近では2010年でした。ということで、来年2021年、2027年、2032年が聖年になります。100年に14回しか聖年が来ない事を考えるとやはり来年は希望の年になりそうですね。

レコンキスタについてはこちらのブログをどうぞ↓

primaverana.info

 賛否両論スペイン国旗イルミネーション?

 今年プラド通りに初登場!点灯前からテレビで賛否両論の声があった「スペイン国旗」のイルミネーション。各局テレビでは街頭インタビューの様子が放送されました。

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Telemadridより

反対派の声からは「クリスマスのセレブレーションに政治色を入れるべきではない」という意見が多く挙がっていました。逆に賛成派からは「今年困難をともに闘ったスペインを称える意味で良い」という意見が…。

バルでスペイン人が集まるとすぐに政治討論が始まるこの国でスペイン国旗をイルミネーションに入れるとはかなりの覚悟があったはず。外国人の私からすれば、それほど気にならないこのイルミネーションも現地では違った意味で盛り上がりを見せています。

  2019年から誕生したグランビアのGran Bola(グラン・ボラ・写真左)今年も登場。直径12M、4万3千個のLED電球が使われ7トンの重さがあります。1日3回、耳と目で楽しませてくれます。(18時30・20時・21時30各6分間)。また、セラ-ノ地区も今年はポップでカラフルな宝石箱のような遊び心たっぷりのイルミネーションになっていて見逃せません。

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スペインのクリスマス風景や習慣をスペイン現地ガイドが解説します。

12月15日(火)・29日(火) 日本時間20時(1時間)~バルから生中継‼‼‼好評につき29日も催行決定です。

www.myushop.net

 

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マドリード散策 美術館の現代建築を見る

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caixaforum Madrid

マドリードの美術館はその建築を見るだけでも価値があります。今回は中心地に数ある美術館の中から、歴史的建造物と面白く融合したお気に入り2か所をご案内したいと思います。

  200年の時を隔てて合わさった 王妃ソフィア芸術センター

  現代アート美術館として1992年にオープンしたソフィア美術館。この美術館の建物は16世紀、18世紀、20世紀に活躍したそれぞれの偉大なる建築家たちの結集。

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《左下》18世紀《右上》21世紀

 オリジナルは16世紀の黄金時代、国王フェリペ2世の命で建てられた「サン カルロス病院」。その後、18世紀国王カルロス3世が大改装を計画します。国王に仕えていたイタリア建築家Francisco Sabatiniフランシスコ・サバティ-二が指揮を取りました。この建築家、マドリ-ド王宮にも大きく貢献した18世紀の偉大なる建築家です。様々な改築がなされたものの、1977年、歴史芸術保存建造物に指定され建物保存が保証されると美術館へと発展して行きます。

 2005年、美術館拡大に向けフランスの建築家Jean Nouvel(ジャン・ヌーベル)がたちあがります。18世紀の元病院とは全く異なる近代的な建物を併設させました。彼はプリツカ-賞受者であり、日本では東京電通本社を手掛けた建築家です。

  ジャン・ヌ—ベル氏の大天蓋

 こんな巨大な屋根は見たことがない!どこから見ても目立つ真っ赤な天蓋。

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驚異の8000平方Mの屋根は一見、薄い鉄板を乗せているようですが、この切込みを見ると相当厚みがあるのが分かります。下から見るとまるで空に赤い折り紙を置いたような完璧な直線が特徴的。

一番の注目は、200年の時を隔てたこの隙間

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ジャン・ヌ—ベル氏が18世紀の建築家フランシスコ・サバティ-二に最高の敬意を示したのだと(勝手に)感じるこの隙間。元サンカルロス病院と離れ過ぎずに平行に並べた屋根。この間に200年の隔たりがあることを考えると感動的です。このように先代の残した物に敬意を表して新しい物を加える。これがやはり石建築の醍醐味。

www.museoreinasofia.es

 

  19世紀の発電所と生きた壁 Caixaforum Madrid

 カタル-ニャ大手銀行「La Caixa」財団が2008年にオープンさせたオールジャンルアートの展示、ワークショップ開催などを行うソーシャルカルチャ-センタ-です。

19世紀のレンガ造りの発電所を一部残して改装したのは、プリツカ-賞受賞スイスの建築ユニットHerzog&De Meuron(ヘルツォーク&デムーロ)。日本では、東京青山のプラダブティック、有名な所では北京オリンピックのメインスタジアム驚異の「鳥の巣」を生み出した建築家たちです。

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じっくり見ると興味深い。建築ど素人的に表現すると、「古いレンガ造りの発電所地上階部分は切り取り、最上階部分は全く違った素材で積み増している」。それにより、建物がまるで浮いているように見えます。建物に近づくと、上の右写真のように柱が殆どなく本当に宙に浮いている錯覚に陥ります。また、建物上に積み増した部分はカフェになっており美術館を利用しない人でも上がることが出来ます。

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メインエントランスは近未来的なメタリックな階段がレセプションまで続いています。それに比べ中の階段は

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全く異なった素材と柔らかいデザインで造られています。

三角形を合わせて作った床、天井、壁。3角形にすることによって凹凸を出し、無機質で平凡になりがちな空間をより立体的にしています。この3角形の頂点がピッタリ合ってるところが最高に心地良いですね。

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  「生きた壁」を作った植物学者

 CaixaforumMadrid横にあるひと際目を惹く緑の壁は「垂直庭園」。

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フランスの植物学者Patrick Blanc(パトリック・ブラン)が造った壁です。彼の作品は世界中にあり、日本では金沢21世紀美術館が一番有名なところでしょうか。

彼のコンセプトは「植物=オブジェ」ではなく、「植物=共生するパ-トナ-」。壁に生きた植物を張り付けるのではなく、そこに生態系を創りあげるというもの。その場所にあった植物や生物を研究して創り上げるため壁が成長していきます。さらに同じ壁は2つとないというのも魅力の一つ。驚く事に土は一切使用されておらず特殊な素材に植物を植えています。近づいてよく見ると水が少しずつ流れています。季節によって違った顔を見せてくれるなんて本当に素敵ですね。

caixaforum.es

The Vertical Garden: From Nature to the City

 パトリックブランの世界観を知る↓ (英字のみです)

The Vertical Garden: From Nature to the City

  • 作者:Blanc, Patrick
  • 発売日: 2008/08/01
  • メディア: ハードカバー
 

 

スペインの美術館は、絵を楽しむだけではありません。建物、内装も必見です。

次回はおしゃれな物が溢れている。美術館内ショップを紹介します。

 

 

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自宅プラド美術館【番外編】 ヒエロニムス・ボスが描く欲望と赤い実 

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この画家の事を何も知らずに初めて「快楽の園」の前に立った時、衝撃でその前から離れることが出来なっかたのを覚えています。人間の欲深さを美しく詩的に描いた画家El Bosco日本では画家《ヒエロニムス・ボス》と言われています。

斬新な色使いとタッチで高い人気のあるボスの絵は、世界に30点もなくその中の10点はプラド美術館が所蔵しています。

15,16世紀 国王達を虜にしたボスの絵

 

3分でボスを知る (1450-1516頃)

画家一族3代目、本名はイエルン・ファン・アーケン。15世紀フランドル地方(現在のオランダ・ベルギー付近)スヘルト-ヘンボス出身のため、生涯画家の名をボスとした。「聖母マリア兄弟会」というキリスト教友愛団体に所属し、絵画の制作活動をする一方、主に王族貴族からの注文を受けていた。

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元々、彼のコレクターはスペイン黄金時代の国王カール5世の父で美男王と言われた国王フィリップ(1478年 - 1506年)。この国王の妻が知る人ぞ知る狂女フアナ。国王フィリップが亡くなるとボスコレクションが必然的にスペイン国王の物となり、後を継いだ孫にあたる国王フェリペ2世が蒐集していったのです。詳細は↓↓

primaverana.info

 では早速絵画を見ていきましょう。公式ページを開き、絵画解説左下の「SEE WORK ON THE MUSEUM WEBSITE」をクリック→絵を拡大して楽しんで下さい。

サイトの使い方はこちら↓↓  https://www.museodelprado.es/en

primaverana.info

青文字→絵のタイトル。コピペして公式ページ検索欄に入れて下さい。英語表記

赤文字→登場する人物の名前。人間関係をより一層分かりやすくしています。

 

El Bosco ボス 1450年頃 フランドル

15世紀は識字率が低かったため、聖書の内容を絵にして説明する作品が主流でした。

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The Garden of Earthly Delights Triptych】快楽の園 1490年頃 宗教画 

2.2m×3.8m迫力ある大きな作品。見て分かるように3つの違う場面を描いています。この絵は左右が開閉式になっており、閉めると天地創造の姿がモノクロームで誕生する仕組みになっています。スト-リ-は左から始まります。「アダムとイブ」「欲望と堕落の世界」「地獄」

左の絵を拡大。まだ写真がない時代、実物を見なかったであろうゾウやキリンを正確にに捉え、同時に架空の生物も沢山生み出しています。泉の中、ピンクの塔は15世紀とは思えない斬新な描き方です。この塔の右側を拡大してみて下さい。男性の横顔に見えますか?こういったダブルイメージ手法に強く影響を受けたのが、スペイン現代ア-ト巨匠のダリでした。まさにシュルレアリスムの世界ですね。

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 彼の作品はミステリアスで謎が多い。真ん中の原罪を描いた場面は、赤い実を楽しむ人間と動物達。ありとあらゆる欲望、性欲が詩的に描かれています。興味深い事に白人、黒人、黄色人とその肌の色も様々に描かれています。

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ボスのはっきりした自画像は残されていません。しかし、この原罪の中で唯一こちらを向いている人物。彼こそが自画像なのではないかと言われています。どこにあるのか拡大して探してみて下さい。

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今度は右の地獄。当時、欲の象徴とされていた楽器によって苦しめられている人々。見た事のないこの楽器は15世紀フランドル地方で使われていた楽器です。その中に奇妙なメロディーを奏でる「お尻に掛かれた楽譜」。枯れ木にされてしまった男がこちらを見て怪しく微笑んでいる。拡大して隅々まで見て下さい。ぞっとします。

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最後は絵全体を見て下さい。楽園の園からアダムとイブの間に立つ「神」、地獄からは枯れ木にされた男。この二人がこちらを向いている。その間に立ち正面の原罪を見つめた時、自分の内面が鏡のように映し出されると言われています。国王フェリペ2世は晩年、自室にこの絵を運ばせました。死を直前に国王はこの絵を見て何を思ったのか?

「罪深い人程多くが見える」。自分にだけ見つかる「何か」があるはずです。

 

結論は、この絵には答えはない、また必要ない

【この世は地獄か天国か】このサブタイトルがインパクト大。 世界中の各方面で活躍するアーティストが【快楽の園】を前にして何を述べるか。お尻に刻まれた楽譜が奏でる音楽を歌うシ-ンが印象的です。さらに、X線を通して初めて解明される驚くべき下絵。
プラド美術館全面協力の元でフランスが作成したドキュメンタリーDVD。非常に興味深いです。↓↓

謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス [DVD]

謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス [DVD]

  • 発売日: 2018/06/02
  • メディア: DVD
 

 こちら↓↓は拡大写真でじっくり説明されていて面白いです。

 プラドオフィシャルサイトには他のボスの絵も楽しむことが出来ます。

本日はここまで…。引き続き自宅プラド美術館をお楽しみ下さい。

 

 

 

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自宅プラド美術館 #01オフィシャルサイト徹底解説 ティッツァーノ・エルグレコ・ティントレット

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絵を見る時は、一切の固定観念なく絵の前にただ立ち、

「美しい」「素晴らしい」「何か惹かれる」を感じることが出来たら一番いいんです。しかし、感受性に乏しい私はどうしても「何で」「誰が」「誰のために」なんて余計な事を知りたがり、色々調べて納得いく答えを作りたがる。ま、仕方がないそういう性分ですから。そうやって見ていくうちに美術館が好きになった。そんな理由があってもいいはず。

 

今回は膨大な数の絵画をどう見るか。もちろん全部見るのは不可能に近い。私は絵の先生でも何でもないため絵自体を解説するのではなく、時代背景と画家達の関係性という面から見る順番を解説していこうと思います。ぜひ、プラド美術館公式ページを開きながら見て下さい。

primaverana.info

前回のブログ↑↑↑で、【1900年中期までの絵画=プラド美術館】、【現代ア-ト=ソフィア美術館】と案内しました。究極に分かりやすく画家の職業的立ち位置から言うと

プラド美術館】は注文者>画家

主に注文画で画家は自分の意志で絵を描くことはなく、誰かの注文に応じて描き報酬を貰う。主な注文者は国王や教会、貴族。内容は主に宗教画、肖像画、神話。

【ソフィア美術館】は画家>鑑賞者

画家が自由な発想で描き、見る側がそれに価値を付けて購入するようになる。絵の解説や意味は重要ではない。現代アート初期はシュルレアリスム(超現実主義)と言って、描かれる対象物は目で見えている物だけではなく、頭の中で見えている物が多くなる。鑑賞者が画家は何を表現しているのかを考えるようになる。

 ということで、プラド美術館の作品は「誰が」「何のために」が非常に色濃く出ている。権力者に気に入られた者のみがのし上がる!この辺りが私を虜にするのです。さて、実際に絵画を見ながら進めましょうhttps://www.museodelprado.es/en

公式ページを開き、絵画解説左下の「SEE WORK ON THE MUSEUM WEBSITE」をクリック。絵を拡大して楽しんで下さい。サイトの使い方はこちら↓↓

primaverana.info

青文字→絵のタイトル。コピペして公式ページ検索欄に入れて下さい。英語表記

赤文字→登場する人物の名前。人間関係をより一層分かりやすくしています。

16世紀 国王の心を掴み取ったのは誰だ
ティッツァーノ ティントレット エル グレコ

 画家1 1500年頃~ イタリア絵画ヴェネツイア派Tiziano ティツイア-ノ

国王コレクションに新風をもたらした画家ティッツァーノ。黄金時代の国王2代に渡って宮廷画家を務めた。何が国王の心を掴んだのかを見ていきます。彼はこの後出てくる偉大なる画家達に大きく影響を及ぼした重要な人物です。

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Emperor Charles V at Mühlbergカール5世騎馬像 1548年 肖像画

スペインハプスブルグ第一番目の国王。

ミュ-ルベルクの戦いでプロテスタントに圧勝した国王の姿をまるで英雄のように描いたティッツァーノ。権力を象徴し政治的意味をしっかり捉え描く事に長けていたんですね。国王のお気に入りの画家でした。

Philip II Titianフェリペ2世 1551年 肖像画

カール5世に継ぐ国王フェリペ2世。彼はヒエロニムス•ボス蒐集家で美術を強く愛した国王。全体像を見て下さい。高価な調度品の前に斜めに立ち、顔はこちらを向いているが一切の感情表現を消し去った無表情。見ている私達とは一線を引いたような描き方。これが今後スペイン王室の公式肖像画構図となります。後に登場するヴェラスケスティッツァーノに強く影響を受け、同じ構図で国王を描いていきます。

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(左)Emperor Charles V at Mühlberg (右)Philip II

 1分で読み取る15世紀から16世紀時代背景

スペイン黄金時代。フィリピン、新大陸、西ヨーロッパの殆どがスペイン国王の手にあった「日の沈まない帝国」と言われた時代。キリスト教カトリック」が強くなるにつれ、改革を唱える「プロテスタント」が誕生。宗教戦争勃発。華々しく力のあるカトリックこそが真のキリスト教だ!と力を見せていた時代。宗教画がねじれた表現になっていく。

この時代の国王は、スペインハプスブルグ一番目カルロス1世(世界史ではローマ皇帝カール5世)。コロンブスを輩出した偉大なるイサベル女王の孫。続く息子の国王フェリペ2世。2代に渡って美術に強い愛を注いだ国王国王に気に入られようと世界中の画家が絵を捧げた、それらが美術館コレクションの基盤になっています。

The Glory】三位一体の栄光 1551年 宗教画

キリスト教において三位一体は「神」「神の子イエス」「精霊の象徴の鳩」。ここに、なんと国王とその家族が入り込んだというまさに権力の象徴。晩年の国王カール5世ティッツァーノに注文した作品。雲の下、跪き手を合わせる国王。そのすぐ後ろに妻イサベル、そのさらに後ろに後継者である皇太子フェリペ2世まで描いた。「聖書に忠実」などと言っている画家はのし上がれない、やはりティッツァーノ只者ではなかった。

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雲の上、珍しく青い服を着た神と神の子イエス、さらに青いベールを着たマリア(マリアは常に青いべ—ル)が後ろを向いて振り返るような形で描かれています。下方面には旧約聖書のモーゼ、ノア、ダビデがそれぞれ各シンボルを持って描かれ、まさにオールスタ-登場。かなり迫力のある1枚。

 

80年の時を隔てた名作【Adam and Eve】アダムとイブ 

ティッツァーノ(1550年イタリア)と ルーベンス(1628フランドル)

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ティッツァーノフェリペ2世のために描いた「アダムとイブ」を80年後にルーベンスが模写した作品。

2枚の絵を並べて拡大して見て欲しい。どちらが正解ではなく違いがはっきり見えてくる。そこで何を思うかは自由。

①禁断のリンゴをイブに誘惑している蛇と天使の顔

ティッツァーノ→天使の顔がアダムに向いている

ルーベンス→イブを誘惑するように顔を向けている。

②アダムの体制。

ティッツァーノ→アダムは天使を見て驚いたようにイブから離れて後ろに倒れそうな体制。

ルーベンス→イブをしっかり見つめ前のめりになり、実を取ってはいけないと悟っているかのような体制。

この偉大なる国籍の違う画家達がスペインという国を通して絵と絵が出会った瞬間を見ることが出来るのもこの美術館の最大の魅力。実際にプラド美術館内でも2枚並べて展示してあるところが震えます。

 

さて、師匠ティッツァーノが大成功となれば弟子たちも動き出す。

画家2 1500年頃~イタリア絵画ヴェネツイア派Tintoretto ティントレット

本名ヤコポ・ロブスティ。TINTOとは、絵具とか染物と言う意味です。染物屋の家に生まれた事からTintorettoというニックネームで呼ばれるようになる。さて、この画家はティッツァーノの弟子の一人です。非常に面白い感性で絵を描くため、この当時は「変わり者」なんて言われていました。

The Washing of the Feet使徒の足を洗うキリスト 1548年 宗教画

実際は大きな絵で2m×5.3m。最後の晩餐の前に弟子達の足を洗ったイエスを描いた宗教画でも同じみの場面。背景に水路やゴンドラを描きヴェネツイアの風景にしたり、真ん中に犬を描いて日常的な場面を描いたりと他の画家とは違った視点で描いています。正面に座り画面全体を見て下さい。画面右下の跪いている男性がイエス。12人の弟子たちがバラバラと描かれ、どこが中心か分かりにくい絵ですよね。この絵は教会からの注文画でした。ティントレットは聖職者たちがこの絵に対して右側に座る事を知っていた。絵を正面に見て、右側に動いてもう一度見て下さい。たちまちイエスが中心となり、12使徒達が後ろ側に居ることが分かります。さらに奥行がずっと伸びます。このような、少し目線を外した斬新な描き方は当時の国王フェリペ2世には好まれませんでした。宗教戦争の中、国王は「カトリックとは何ぞや」の絵を必要としていたのです。ティントレットが見直されるのはルーベンスが登場する100年後のこと。その時代と国王に合う画家だけが高い評価を受けるのです。

 画家3 1540年頃~ ギリシャ生まれのスペイン画家EL Greco エル・グレコ

本名ドメニコス・テオトコプ-ロスギリシャクレタ島で生まれました。当時ギリシャ人画家は珍しく、あのギリシャ人「EL Greco」と呼ばれるようになる。ギリシャビザンチン様式を学んだグレコは、ヴェネツイアに渡りティッツァーノの工房に身を置きます。さらにローマでルネサンスに触れたグレコは世界の頂点スペインに目を向けます。何とか国王フェリペ2世から注文を受けようと38歳頃やって来たのです。

 【The Holy Trinity聖三位一体 1577年 宗教画

エル・グレコがスペインに来て間もなく描いたという作品。ローマで触れたミケランジェロの彫刻「ピエタ」に強く影響されたとされ、よく似た構図で描かれたイエスが特徴的。グレコならではの大胆な色使いと表現がしっかり現れた初期の作品。当時の宗教改革の影響を大きく受けたのでしょう、「聖書」の世界を描く時、グレコはあっと驚くような動的で大胆な世界観を表現しています。

The Nobleman with his Hand on his Chest胸に手を置く騎士 1580年 肖像画

一方、肖像画は非常に静かです。原色を殆ど使わず、目の前の人をじっと見つめて描いたんだなと感じます。全体を見て下さい。暗闇の中からこの騎士の内面が見えてきます。寡黙、紳士、高貴。

The Annunciation受胎告知 1597年 宗教画

グレコが描いた受胎告知は15点近くあると言われています。その1点はなんと、日本の岡山倉敷大原美術館にあるから凄い。

www.ohara.or.jp

宗教画の中でも多くの画家が手掛ける人気のテーマ「受胎告知」。年表を1500年代に合わせ、検索に「The Annunciation」と打つと、多くの作品が出てきます。↓

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宗教画は、持っている物、衣装、花などに決め事があるのはご存じでしょうか。聖母マリアは「青いベールと赤い服」、「鍵を持つ聖人」はペトロ、「百合の花」は潔白を意味するなど見ていくと大変興味深いのです。さて、この「受胎告知」は古い物から見て行ってもみんな立ち位置が一緒です。この年表にはない、レオナルド・ダ・ヴィンチ作品でさえも同じなんです。誰のか!大天使ガブリエルとマリアです。殆どの画家は右に「マリア」左に「天使」を描きます。そして、この場面は「厳かで、静かな秘密の告知の場面」として描く中、グレコは完全に違います。まるで、現代のアニメーションのような描き方で動的に、劇的に、刺激的にその場面を描き、マリアと天使の立ち位置を他の画家とは真逆に表現したのです。自分の意見を貫くグレコは何度も教会ともぶつかり裁判にまでなった画家です。

この時代に彼は注文を受ける画家ではなく、自分のこだわりを貫いた歴とした「アーティスト」だったのだと私は思います。独特の表現法により、フェリペ2世の目には掛かりませんでした。彼の絵は19世紀から20世記、ピカソなど現代アーティスト達が評価したことで見直されるんですエル・グレコ時代を先取りし過ぎていたんですね。公式ページにコレクションが沢山あるのでじっくり楽しんでみて下さい。

 

エル・グレコ こだわりの【手】の表現

エル・グレコ中指と薬指を重ねた形が手を一番美しく見せると考えていました。このポーズは三位一体を表すとも言われています。

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本日はここまで…。

まとめ

15.16世紀はスペイン黄金時代。国王の力が強くカトリック教会と強く結び付くことにより、画家に求められていたことは「権力の象徴」「偉大なるカトリック」「壮大な表現の美」だったのではないでしょうか。

次回は17世紀。黄金時代は長く続かず、衰退していく王国。ここでベラスケスルーベンス登場です。二人の関係とティッツァーノが及ぼした影響などを見ながら解説したいと思います。

 

 

エル・グレコ画集 (世界の名画シリーズ)
 

 

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マヨ—ル通り 約1KM弱に隠されたガイドブックに載っていない魅力 《後半》

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54番地付近

スペイン人にも人気の通り。「マヨ—ル通り Calle Myor 」。後半も見どころがいっぱいです。

 今回も番地を見ながらガイドブックに載っていない面白い場所を探していきたいと思います。前半はこちら↓↓

primaverana.info

[http://:title]

 

著名人達がこぞって住んでいた通り

 この辺りは17世紀に造られたマヨ—ル広場、100年以上前のサンミゲル市場など、ガイドブックでお馴染みの人気スポットのすぐ前辺りです。

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左46番地                右61番地

46番地は16~17世紀活躍したマドリ-ドの生まれの劇作家Lope de Vega(ロペ・デ・ベガ)生まれた場所。

61番地は17世紀活躍した劇作家のPedro Calderón(ペドロ・カルドロン)が生涯愛した住居跡。

 

1分で読む黄金時代の著名人 同じ時をマドリ-ドで過ごした著名人達

ロペ・デ・ベガは大衆劇が多く、代表作【オルメ-ドの騎士】は悲劇とされながらもテンポ良くストーリーが進み読みやすい。

カルデロンは劇をさらに進化させ、舞台装置や音楽などにも力を入れた人物。現在スペインオペラ「サルスエラ」の生みの親。彼の喜劇新作であった「アポロの月桂樹」という作品を国王フェリペ4世の別荘サルスエラで上演したことで劇自体を「サルスエラ」と呼ぶようになったと言われている。ちなみに国王フェリペ4世は宮廷画家にベラスケスを迎えていた国王。

この二人の少し先輩だったのが、有名な【ドン・キホーテ】を書いた小説家ミゲル・デ・セルバンテス。彼も晩年はマドリ-ドに住んでいたため、この偉大なる4人が顔を合わせていたことでしょう。海を越えたイギリスではウィリアム・シェイクスピアも居たのですから、この時代は有能な人が沢山いたんですね。本当かどうか、セルバンテスシェイクスピアの命日は同じなんて言われています。

 マヨ—ル通り54番地辺りから右上(正確にはCalle Milaneses 3番地)

Accidente Aèreo (仮 不時着)

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54番地周辺

スペインのこういう大胆な所が好きです。しっかり探さないと通り過ぎてしまいますが、54番地辺りの角から右手上を見ると、なんと失敗作か?と思われる作品が見えます。こちら、Miguel Ángel Ruiz Beatoの手によるれっきとした作品ブロンズで造られており、なんと重さ300KG!

「1万年前の日差しが心地よいある日、翼を持つ天使がのんびり散歩に出かけます。あまりの気持ちよさに仰向けに太陽を浴びた彼は、そのままいつもの牧草地に着地しようとしたところ、その場所は大きく発展を遂げ大都会になっていたため不時着してしまった」というストーリー。個人的に好きです。

 

44番地(サンミゲル市場目の前)の角にはお勧めスペインコスメブランド【La Chinata】ラ・チナタの路面店があります。1932年創業Extremadura(エストレマドュラ州-ポルトガル付近)の農園で作られた上質なオリ-ブを使用した製品を扱っています。マドリ-ドの某5つ星ホテルのスイ-トルームのアメニティーにもなっている安心ブランドです。

www.lachinata.es

黄金時代の元宮廷が続く

 マヨ—ル通り66番地 Plaza de Villa ビリャ広場

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 ここは、ハプスブルグ統治時代マドリ-ドの中心地だった場所。中世の時代はサルバドール広場と呼ばれていました。

 

15世紀、16世紀、17世紀 3つの時代が違う建物

《写真左高い塔》15世紀 Torre de los Lujanes ルハネスの塔 

塔は1471年創建でマドリ-ドで最古の建物と言われています。元はアラゴンの商人であったLuján(ルハン)一族の館。ムデハル様式といって、キリスト教時代に栄えたアラブ様式になっています。入口に15世紀の国王であったEnrique IV(エンリケ4世)のプレ-トがはめ込まれています。この国王によってまだ当時首都ではなかったマドリ-ドが権威ある街だと認定されたのです。この国王様、かの偉大なるイサベル女王の腹違いのお兄さん…。歴史上では不能王なんて汚名を持つ国王です。

《写真正面》16世紀 La Casa de Cisneros シスネロスの家 

1537年完成。かの有名なイサベル女王の時代に権力を持っていたシスネロス枢機卿の甥にあたるベニ-ト ヒメネス シスネロス家です。現在はマドリード管轄下になっており、入場はできません。

《写真右》17世紀 La Casa de la Villa旧市庁舎

1645年フェリペ4世の命で完成した建物。この国王様、政治的にはあまり活躍された記録はないのですが、とにかく芸術好き。宮廷画家にベラスケスを迎えた国王です。建築はフアン ゴメス デ モラ。彼は当時のマヨ—ル広場建築も担当しました。この建物は2007年までマドリード市庁舎でした。

マヨ—ル通り69番地  Palacio de Cañete カニェテ宮殿

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16世紀後半から17世紀にかけて建てられた宮殿。スペインハプスブルグ第1番目の国王カルロス1世と非常に親しいカニェテ侯爵の宮殿として建てらました。当時の宮殿としては珍しいレンガ造りです。現在はマドリード管轄の建物となっており、マドリード日本文化センターなどが入っています。

ホーム - 国際交流基金マドリード日本文化センター

 

 

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《写真左側》マヨ—ル通り79番地  El Palacio de los Duques de Uceda 旧ウセダ侯爵宮殿

1610年完成。マヨ—ル広場、旧市庁舎を手掛けたフアン ゴメス デ モラが指揮を取った建物です。ウセダ侯爵は国王フェリペ3世と強い繋がりのある人でした。ちなみに国王フェリペ3世の時代は17世紀初頭。この国王様に会った日本人に伊達藩支倉常長氏がいます。日本との繋がりもあった国王様。

ウセダ侯爵がお亡くなりになった後は、なんとマリア デ オーストリアの邸宅となります。マリア王妃は国王フェリペ4世の2番目の奥様。ベラスケスも彼女の肖像画を残しています。現在は政府機関であり、入場不可です。

《写真右》マヨ—ル通り86番地  Es el Palacio de Abrantes アブランテス宮殿

1653年、建築家フアン マサが裁判所として建てた物です。次々に持ち主が変わり、1842年アブランテス侯爵が住居として大きく改装しました。19世紀後半、イタリア政府が当時にして400.000ペセタで買い取り、現在はイタリア文化センターです。

この建物はイスラム教徒統治時代(マドリードは8世紀~11世紀頃)の城壁を崩して建てました。当時の設計記録にはなんと440もの城壁ブロックがあったと記載されています。現在もその一部を壁として利用しています。

 

さて、ここまで来たらもう目の前はアルムデナ大聖堂と王宮です。

ぜひ、マドリードに来た際には小さな見どころも楽しんで下さい。

 

 

 

 

 

 

 

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お家で楽しむ プラド美術館 オフィシャルサイトが凄すぎる!

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美術館って楽しみ方が色々。

所要時間、目的、年齢層によって各々の見方があって不正解はありません。

ここでは、マドリードガイドの私流【プラド美術館】の楽しみ方をご案内したいと思います。あ-‼‼美術館に行きたい!でも行けない!家で楽しんで下さい。今回お伝えする内容はネット環境さえ整えていればスマホ一つでプラド美術館を堪能できる情報です。

思いが熱いので3回(?多分)に分けて案内していこうと思います。

 

私流①

プラド美術館の特徴を見る」  国王の美術への情熱の結晶。

プラド美術館は歴代の国王様が収集した王家のコレクション。特に黄金時代(15世紀後半~17世紀前半)の国王が集めた作品が土台となっています。

スペイン黄金時代は、フィリピン、新大陸、西ヨーロッパの殆どがスペイン国王の手にあったんです。

想像してみて下さい。スペインが世界の頂点!国王に気に入って貰えば仕事が激増!って考えますよね。世界中の名だたる画家が「国王に絵を~」となるわけです。だから、この美術館は戦利品ではなく王家の純粋なコレクションを中心とした世界に数少ない貴重な美術館なんです。

 

国立 プラド美術館を1分で知る

18世紀カルロス3世の命で造った元自然科学アカデミ-を美術館としてフェルナンド7世(カルロス3世の孫)が1819年開館。

油絵7600枚、彫刻1000点、版画4800枚、素画8200枚を所有しているが展示されているのはほんの一部。

大きく分けて、国立プラド美術館の作品は1900年代中旬までのア-ト、国立王妃ソフィア芸術センタ-はそれ以降の現代ア-トが展示されている。よく質問されるピカソゲルニカはソフィア美術館、現代ア-トです。

現在、全予約制で入場可能だが、見れる場所は通常点よりさらに縮小されている。(2020年9月現在)

 

私流② 

「見る順番を考える」

プラド美術館は年代順にみると一層楽しい。

国王のコレクションなので、その時代に流行っていた描き方、時代背景、人間関係がとても色濃く出ているのがこの美術館の大きな特徴。元ツアコンという仕事上、世界中の美術館を回りましたが、ここまでスト-リ-性と絵画同士の関連性が深い美術館は他にはない!!と言い切りたい。(あったら教えて下さい)

 どれだけ凄いかを知ると、さらに美術館が楽しいですね。

では本題ですが、絵を実際見ないと何のことか分かりません。本を購入しなくても大丈夫。プラド美術館オフィシャルページに絵が掲載されているんです。さすが世界のプラド!

↓↓↓ 

www.museodelprado.es

 こちらが↓↓トップページ(トップぺ-ジもオールスタ-がズラリ。凄いですね)

「ES」スペイン語または「EN」英語お好きな方を選びます。

「COLECCIÖN」をクリック

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オフィシャルサイトから

 ③Línea del tiempoをクリック (コレクションの年表)

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オフィシャルサイトから

こんな素晴らしく便利な年表があるんです!!ますますプラド美術館て素晴らしい。

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オフィシャルサイトから

この年表、絵をクリックするだけで説明が表示されます。年表軸も左、右にスライドさせることが可能です。

見たい画家と絵が分かってる場合は右上→の中にタイトルや画家の名前を入れて検索。

ちなみにこの年表、上段が世界の画家下段がプラド美術館所有の作品。驚くことに、上段の絵もクリックすると説明が出てくるんです。

さて、見たい絵をクリックして下さい。例えば知名度の高い【フラ アンジェリコ

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オフィシャルサイトから

(例)フラ アンジェリコ 

画面右側【+ -】マークをクリックし見やすい絵の大きさに変更して下さい。

そのすぐ下イヤフォンマ-クをクリックするとなんと音声ガイドが楽しめます。これも英語、スペイン語が選択できます。

 

これだけでも充分ご自分で自宅で楽しめますね。

どれだけのコレクションがあるのかこの週末に楽しんでみて下さい。

本日はここまで…。

 

次回は、絵を見る順番をご案内します。

絵に隠された時代背景、画家同士の関係性を探りながらご案内していきます。きっと一段と絵画が面白くなるはず。

 

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